「それがすごいんじゃないの。
あたしは目が見えるからあんたの感覚がよく分からんけど、見えるあたしでも分かんないことをやってるんだからさ。
ねえ、あんた、この花のバランスとか分かるかい?」
痩身の主婦が苦笑した。
「私に分かるわけないでしょう。
子どもや旦那が引っ掛けた布をつくろうので精一杯だよ」
別の主婦が同意する。
「そうそう。ここまでのお裁縫、そう出来ないわよ。
だからこんなかわいい先生がいらしている時に、色々教えてもらわんとね」
「ティファニーちゃん、クッキーいかが?」
少年は隅で紅茶を飲みながら、針道具を出し始めた女たちを見つめた。
ティファニーを囲い、彼女から刺繍を教わっていく。
(すごいですね……。
普通、針は幼い子が年嵩の女性に教わるものだと聞きましたが、この場合は逆。
ティファニーの母親は、優れた刺繍屋だったんでしょうね)
そういえば、ティファニーに両親はいないのだろうか。
雰囲気を見る限り、あの家に住んでいるのは彼女ひとりだけのようだ。
疑問を浮かべてビスケットをつまんだとき、庭から泣き声が聞こえてきた。


