荷物を彼女の家に置かせてもらい、少年はティファニーについてルースへ引き返した。
ティファニーは障害物がないか杖で地面を探り、ゆっくりと歩いていく。
また転んで散らばってしまうと面倒なので、籠は少年が持っていた。
「ごめんなさい、迷惑かけて……」
しょんぼり言うティファニーの肩に、少年はポンと優しく手を載せた。
隣にいると分かっているから、彼女はもう過剰には驚かない。
「いいんですよ。ぼくの旅は急ぐものではありませんし。
それに、セドナの友達なら、お手伝いをするのに理由なんていりませんよ。
遠慮しないで、どんどん頼ってください」
「……ありがとう」
指先で頬を掻いて、ティファニーが小さく肩を竦める。
隣に並びながら、少年は改めて刺繍屋を観察した。
ほとんど家から出ないのか、深窓の姫君もかくやと思われるほどに肌は白い。
茶色を基調にしたアンティークなワンピースに歩きやすいブーツという格好は、街の住人とは異なった雰囲気をもつ彼女にぴったりだ。
セドナはこの雰囲気に惹かれて、仲良くしたいと感じたのだろうか。


