案の定、ティファニーはおでこをさすりながら出てきた。
唇を歪めているので、かなり痛い思いをしたのだろう。
「……大丈夫、ですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「もしかして、今からお出かけですか?」
落としたままの荷物をまとめながら、少年は尋ねてみた。
ティファニーはお礼を言って、籠と杖を受け取る。
「ええ、依頼されていた刺繍が完成したから、街へ届けに行くの。
……あっ、届けに行くんです」
「敬語じゃなくて大丈夫ですよ。
セドナも最初からそうしていましたから。
ぼくは、まぁ癖のようなものですし」
「あ……じゃあ、そうするね」
やんわりと言われて、ティファニーは戸惑うように笑った。
口元だけしか見えないのに、表情が豊かである。
「その届けること、お手伝いしますよ」
女将に頼まれたからではない。
ティファニーを見ていて自然と思ったことを、少年はそのまま口に出した。


