少女・ティファニーの表情がほころんだ。
手を合わせて喜ぶ。
忘れてしまわないうちにと、少年は持っていた籠をティファニーの膝に置いた。
「これが、宿屋『レイシ』の女将さんからの依頼です」
「あら、おばさんから?」
「テーブルクロスの修繕のお願い、だそうです。
細かい注文については……」
少年はポケットにしまっておいたメモを読んだ。
その間、ティファニーは取り出した点字器で自分が分かるように打っていく。
それからテーブルクロスを手探りで確認して、少年に頷いてみせた。
「……うん、分かったわ。どうもありがとう」
受け取った籠を大事に持って、ティファニーが一旦家に入る。
中で壁にぶつかる音や小さな悲鳴が聞こえたが、大丈夫だろうか。
『少しでいいからその子を手助けしてあげて』
女将がそう少年に頼んだ理由が、何となく察せた。
ティファニーの危なっかしさを知れば、誰だって不安になる。


