「あ、はい、いつものことなので慣れています」
そう言うと少女は照れ臭そうに笑った。
外で誰かに話しかけられるたびに転んでいるのか、不憫だな、と少年はこっそり思った。
すると、少女がずいっと顔を近づけてきた。
少年は反射的に顎を引く。
「……あの、もしかして、ここへ来るのは初めてですか?
聞いたことのない声で、もし違ったらごめんなさい」
「その通りです。ぼくは一月ほど前からルースにいる者です。
君が、刺繍屋ですか」
「はい、ティファニーって言います。初めまして」
ティファニー。
どこかで聞いたことのある名前だ。
記憶をめぐらしてみると、セドナの周りでちょくちょく出ていたものだと思い出した。
「……セドナの友達、ですか?」
「はい。あっ、もしかしてあなたが、セドナの言っていた名無しの修理屋くん?」
「そうです」
名無しに少々引っかかったが、間違ってはいないので少年は頷いた。
「うわあ、嬉しい。
この前に教えてもらった時から、会いたいなって思っていたの」


