後頭部で結わえていたリボンは、飾りではない。
この薄桃色の長いリボンで、両目を覆っていたのだ。
目が見えないのだろう。
それならあんなに驚かれても無理はない、と少年は納得した。
けれどもこれまで盲目の人間に接したことは皆無なので、どうすればいいか分からない。
とりあえず、怖がらせないように声をかけてみた。
「あの、すいません驚かせちゃって」
「ご、ごめんなさい。わわ、私の方こそ……」
少女は困ったように口をパクパク動かし、行き場のない両手を持ち上げてうろたえる。
顔の上部が見えなくて分かりづらいが、きっと半泣き状態だ。
少年の立場にセドナがいたら、間違いなく一緒になっておろおろしている。
「ああの、えっと、ええーと……」
「とりあえず、落ち着いてください。ぼくは怪しい者ではありませんから」
「は、はい」
少女は胸に両手をあてて深呼吸する。
表情が若干和らいだ顔をパチンと叩いて、小さく頭を下げた。


