すると、木目をふんだんにいかしたドアが開く音がした。
少年は庭から玄関へ視線を動かす。
出てきたのは、この家の住人であろうひとりの少女だった。
鍵をしめているらしく、少年に背を向けている。
腰のあたりまで伸ばした、ふわりとした栗色の髪が印象的だ。
頭の後ろで結んでいるリボンは髪飾りだろうか、よく似合っていてかわいらしい。
少年は地図をポケットにしまい、少女に歩み寄った。
「おはようございます」
「わあっ!?」
普通に声をかけただけなのに、少女は肩を大きく跳ねさせた。
少年はぎょっと足を止める。
こちらを振り向こうとして、勢い良すぎたせいで少女が足をもつれさせて尻餅をつく。
持っていた籠と白木の細い杖が転がった。
少女が俯き、痛そうにお尻をさする。
「あいたたた……」
「あの、大丈夫ですか?」
少年は傍らに膝をつき、彼女の肩に手を添える。
途端、少女が「きゃっ!」と悲鳴をあげて身体を仰け反らせた。
そこでようやく、彼女の顔が見えた。


