「手芸屋に近いけどね、その子がするのは裁縫だけだよ。
破れた布をきれいに繕う、布の修理屋ってところかね」
「布の修理屋……」
少年は籠を見つめた。
空いている方の手に、女将がメモを持たせる。
「細かい注文は、全部ここに書いてあるからね。
場所はクラウンっていう森なんだけど、分かるかしら」
少年が口を尖らしたので、女将は簡単な地図を書いてやった。
ここから西へ、一時間ほど歩いたところだ。
どうして街ではなく、森の中で暮らしているのだろう。
獣に襲われる危険はないのだろうか。
少年の思考をさとったのか、女将が言った。
「クラウンの森はね、ほとんどガイヤの木なの。
ガイヤの木、知っているかい?」
「見たことはありませんが、確か、獣が嫌う匂いを放つ樹木ですよね。
小動物には、そこまで効果がない」
「そう。だから、あの森に危ない獣はいないんだ。
ちなみにルースの街が襲われないのも、外壁の代わりにガイヤの木を植えて囲んでいるからだよ」


