「修理じゃないんだけど、お使いを頼んでもいいかしら」
「はい、構いませんよ」
少年は頷いて工具をしまった。
女将がパタパタと廊下へ走り、またすぐに戻ってくる。
小さな籠を手にしていた。
取っ手を飾る青いリボンがかわいらしい。
「これを届けてもらいたいの」
「それだけ、ですか?まだ他に……」
「届け先がここからだとちょっと遠いのよ。
それと届けたら、少しでいいからその子を手助けしてあげて。
もちろん、隣町への移動だってあるし、あんたのできる範囲でね」
「何ですか、これ?」
籠には薄黄色の布がかけられていて、中は見えない。
少年は興味がわいて尋ねてみた。
「テーブルクロス、擦り切れて穴があいちゃって。
それを、刺繍屋さんにすてきな模様に繕ってもらうのよ」
「刺繍屋さん?手芸屋や仕立て屋みたいなものですか?」
手芸屋とは日用品の布類をつくる店のこと、仕立て屋とは衣類をつくる店のことである。
女将は首をちらと傾げ、横に振った。


