師匠が片頬だけで笑う。
試すような笑い方だ。
丸眼鏡の奥の青い瞳に見つめられ、セドナも同じように笑った。
「もちろんです。
先生こそ、俺のパワーにはじき飛ばされないようにしてくださいよ」
「お、大きく出たな。
それじゃあ早速、紅珊瑚石の細工に取り掛かるといい。
あれは時間がかかるぞ。
このテーブル、好きに使いなさい」
ルーアンの節くれだった手が、年季が入った作業テーブルを撫でる。
セドナ専用の作業机よりも広く、工具も多い。
弟子は表情を輝かせた。
「い、いいんですか?」
「もちろんだ、ヒーラーにはお前の作業机を使わせる。
仕事をするのに、あの机では狭いだろう」
「……ありがとうございます!」
セドナは両手を膝につき、深々と頭を下げた。
そのまま自分の爪先を向いてきゅっと唇を結び、喜びを噛みしめた。
明るい感情の波が大きくうねる。
うっかりすると涙がこぼれ落ちそうだ。


