「おやおや、言いたかったことを取られてしまったな」
眼鏡を拭いて、ルーアンは作業テーブルの脇に転がる椅子に腰掛けた。
そこでまた一息つき、セドナを見上げる。
「ヒーラーをしばらく仕事から離すことは、前から考えていたんだ。
わしの代わりに工房の経営を任せてから、あいつは『作る』ことよりも『仕事』や『依頼』に執着するようになった」
「どうしてそう分かるんですか?」
セドナは驚いて聞いた。
ヒーラーの様子の変化は、毎日近くで見ていたはずのセドナには分からなかった。
それなのに、半年も作業を目にしていないルーアンが理解している。
ルーアンは、にっといたずらっぽく笑んだ。
「いつも傍にいるより、たまに離れて見ている方が、その人について色々と分かってくるものだ。
入院中は頻繁に会ってはいなかったが、そのおかげで、会う度にそういう雰囲気を感じられた。
だから工房に戻ってヒーラーの作業を観察して判断しようと思っていたが、まさか、セドナがはっきりさせてくれるとはな」


