極彩色のクオーレ






「おまえさん、知らなかったのかい?」


「ええ、まあ」


「遅れてるぞ~。仮にも工具を持つんなら、『天才』のことは知っておくべきだぜ。


奴は歩く最新技術。


大多数の職人は、あいつを目標にしてるよ」


「けど、羅針盤の針が複数ってのは、やっぱりすげえよなー。


針を『造る』盤はゴーレムに相当な負担をかけるから、普通は3本以上造れるようにしても、そこが原因で壊れちまうんだ」


「記憶できる”心”が一つ、二つだけってのも可哀相な話だ。


そうなると、『天才』のおかげでいろんな”心”を学べるゴーレムは幸せかもな。


より人間に近くなって、造り主以外からも物じゃなくて人として扱ってもらえるようになるからよ」


「アレ?お頭。


でもなんでいきなり『天才』の話が出てきたんスか」



青年が、ふと我に返ってカーボに尋ねる。


カーボは新しい瓶を開けた。



「おまえらも見ただろ?この坊主の手さばきを。


どう考えても人間業じゃねえ。


だからひょっとして、あの噂の男かと思ったんだが……違ったみたいだな」