「……あ、の、先生?
いい今、何とおっしゃいまして……?」
ヒーラーが真っ青を通り越して真っ白になる。
丸眼鏡を押し上げて、ルーアンが太い息を吐いた。
「明日から、わしも仕事に戻る。
ヒーラー、お前にはしばらく、わしの手伝いをしてもらうよ。
これでも病み上がりなんだ、助けてくれ」
「ええっ……いいですけど。
で、でも、ワタシが回ったら工房の経営が……」
ヒーラーがしどろもどろに言った。
チラ、チラ、とセドナに視線を投げてくる。
下の者が工房長などの上の者の手伝いをすることは珍しくない。
飾り職人に限らず、どこの仕事場にも見られる。
ただ、手伝いをしている間は、自分の仕事を振り分けてもらえなくなる。
だからヒーラーは、必死にセドナに目配せしているのだ。
お前が名乗り出て引き受けろ、と。
(その手に乗るかよ)
もちろん、セドナは見えていないふりをした。


