「すまんすまん、内緒の方が驚くかな、と思ったんだ。
わしがいきなり現れて、驚いただろう?
まあ、結果的には、わしの方が驚かされたが」
「どういう意味ですか?」
ルーアンが少年に目くばせする。
その意味を悟って、少年はセドナに教えた。
「ルーアンさん、ですか。
この人は、君とヒーラーさんのやりとりを一部始終見ていたんですよ。
ぼくと一緒に、あの暖簾の陰から」
「え!?」
ヒーラーが再び顔を青白く染めて、ルーアンの背中を見た。
顔中から冷や汗が噴き出ている。
ルーアンは、先ほどまでセドナが座っていた椅子に腰を下ろした。
退院したとはいえ、まだ立ち続けているのは辛い様子である。
「いや、しかし情けないなあ。
まさか疲労で入院騒動になってしまうとは。
老いには勝てん、というところか」
「本当に大丈夫なんですか?
先生はもうおじさんなんですから、無理は絶対にだめですよ」
「何を言うか、わしはまだ現役だぞ。
若い者に負けはせん」


