セドナが掠れた声で聞き直したとき、紺色の暖簾が内側に揺れた。
そちらを向くと、初老の男性が中に入ってきていた。
身体には全体にどっしりとした厚みがあり、丸い鼻には小さな眼鏡が載っている。
指先は堅くなった白い皮膚が目につき、どれだけの間この仕事を行っているのかがよく伝わってきた。
身体がうまく動かせないのか、杖をついて歩いていた。
ヒーラーが音を立てて固まる。
驚きのあまりよろめいて、セドナは少年の背中にぶつかった。
「せ、先生!?どうしてここに?
お、お身体は、大丈夫なんですか?」
セドナに問いかけられ、初老の男性・ルーアンは微笑んだ。
シワの寄った眦から、優しさが浮き出る。
「ああ、心配いらんよ。
ここ最近はずっと調子がよくてな。
今日退院したんだ。
製作は一度にいくつも引き受けてはいけない、と言われたが」
「そうだったんですか……。
先に教えてくれたら、病院までお迎えに行ったのに」
ルーアンは優しく笑って、ふくれるセドナの頭をぽんと撫でた。


