少年はずいと、一歩前に踏み出した。
双眸の冷ややかさが増す。
気圧されて、ヒーラーがその倍後退った。
「まだ分かりませんか?」
「な、何がよ……」
「エレスさんが、ぼくに真珠玉を渡したことが何を示しているのか。
普通なら変更したヒーラーさんに頼むはずだ。
でも、エレスさんはそうはせずぼくに、つまりセドナに依頼した。
きっと信じていたのでしょう、セドナなら諦めず作ってくれるのだと」
「じゃあ、もしかして、エレスさんは……」
セドナは早鐘を打つ左胸の服を握り締める。
少年が振り向き、小袋をかざす。
「エレスさんは最初から、君に作ってもらいたいと考えてくれてたんです。
他のプロの職人に言われて、その場では流されてしまったけど、希望は変わらなかった。
つまり、エレスさんは正真正銘、君の依頼人だったんですよ」
そこで再び、ヒーラーに顔を向ける。
ヒーラーは悔しさで真っ青になり、額に汗を滲ませていた。
「あなたの妨害工作は、初めから失敗していたんです、ヒーラーさん」


