極彩色のクオーレ






カーボの質問に、少年は首を傾げた。



すると、やりとりを傍で聞いていた一人の若者が口をはさむ。



「なんだ坊主、知らんのか。


『優秀な人形職人』って有名な男だよ。


名前が噂で流れたことはねえけど、そいつが手掛けた人形やゴーレムはどれも高性能。


しかも、たいていの人形ならあっという間に造っちまうんだ」


「へえー」



もう一人の、茶髪の青年が話に割り込んできた。



「それだけじゃねえぞ。


奴が造るゴーレムは、人間のように確かな意思を持って動く。


羅針盤の針が1本や2本じゃないんだってさ」


「ふうん……」



少年の反応はやはり薄い。


彼が人形・ゴーレムについての知識が不足していると取ったのか、若者たちは丁寧に説明を始めた。



人形とは、ぬいぐるみや操り人形などの、自分の意思を持たず人間の命令に忠実に従う物をすべてひっくるめた総称。


対するゴーレムというのは、”心”を持ち自由に動き回り、生物とほぼ同じように動くことのできる物である。


その”心”を司るのが、羅針盤の針。


初めは何の変哲もない盤なのだが、人間から”心”をもらうと中心軸から針が自動的に生み出され、そこに記憶するという仕組みになっている。


一体のゴーレムにつき、与えられる羅針盤は一つ、針も多くて二本だけ。


けれどもごく稀に、複数の針を生み出せる羅針盤を持つ、他の物よりも人間に近づけるゴーレムが存在するのだ。


その大半を造っているのが、先ほどから話に出ている男。


だから人々は彼のことをこう呼ぶのだ。


『優秀な人形職人』だと、『天才』だと。