ヒーラーが口元を手で隠し、ほほほ、と笑う。
かなりエレスは引いた様子でいたが、言葉のことは知らなかったようで、そこまで露骨な態度は取らなかった。
「そうだったんですか、知らなかった……」
「あらあら、淑女たる者、これくらい知っておかなくちゃ」
「どんな意味ですか?」
「へ!?」
ヒーラーの声が裏返った。
笑顔が歪む。
「ヒメウタの花と紅珊瑚の石は、どんな意味になるんです?」
会話が通じていないと思って、エレスは言い直した。
彼女は知らないのだ、興味を抱いて当然だろう。
しかしヒーラーは不自然に言葉を詰まらせ、両手を無意味にひらつかせた。
「ぐ、んぬぬ、え、えっとね。
わ、ワタシよりも製作者であるセドナちゃんに聞いた方がいいわよ?
ほら、セドナちゃん、早く説明してあげなさい」
瞬きほどの間、栗型のエレスの両目に不信の色が浮かんだ。
少年の目にも、不自然なごまかし方に映った。
もしかしたら本当は知らないのだろう。
けれどセドナは言及せずに、素直に従った。


