ヒーラーがエレスにウインクする。
かなりの余裕だ。
自分の作品が選ばれると、確信している。
「さ、アンタの首飾りを見せてもらおうかしら?」
勝てるものなら勝ってみろ、といった口調でヒーラーが急かす。
エレスが不安そうに、二人を交互に見た。
薄水色の双眸に悲しそうな、不安そうな表情が横切る。
セドナはトレーに掛けていた薄緑色の絹布を取った。
少年も、首を伸ばして飾りを見つめる。
こちらのプレートは、咲き乱れた花々を抱く小枝を象っていた。
すべての花の中心には紅色(もみいろ)の珊瑚石が埋め込んである。
枝の左上部には一羽の小鳥が止まり、右下部には一匹の兎が寝そべっている。
小鳥は露桃(つゆもも)を咥えているが、それはクラック石で表現されていた。
兎が抱えている縹瓜(はなだうり)も同様にである。
プレートの両端に通してある飾り玉は、やや薄い瑕のついた真珠。
そしてチェーンは砂粒ほどの大きさのアクア鉱物の輪をいくつも連ねたもので、華奢な雰囲気を出していた。
セドナが己の技術をすべて叩き込んだ、といっても過言ではない力作である。
「まあ……なんて、なんて素敵な…」
感嘆のあまり、エレスが息を詰まらせた。
ヒーラーが女性のように整えた眉をしかめる。


