「大急ぎで荷物を積んで出発すれば、今夜中にルースには着くと思いますよ」
「……すげえ」
絵を描いた若者が感嘆を漏らした。
ガハガハガハ
すると突然、カーボが大声で笑い始めた。
彼の部下がそろって、ぎょっとして彼を見つめる。
「坊主、おまえさんはすげえ!
こんなすげえ男、俺は生まれて初めて見たぞ!!」
ども、と少年は軽く頭を下げる。
工具をベルトにしまい、ランプを外した。
「オラてめぇら、さっさと荷物を積め!
5分で出発するぞ!」
カーボの声に男たちは元気よく返事をし、檻に向かって走り出す。
そんなの無茶だという正論は少数で、あっさり聞き流されてしまった。
そうしてきっかり5分後、一行はルースを目指して慌ただしく出発した。
獣道よりは地面が均されてはいるが、乗り心地はそこまでよくない。
おまけに荷車を引く馬は全力で走っているのだ。
あちこちからぶつかる音や謝る声、痛みにうめく声が散らばる。
直してくれたお礼と貸してもらったクッション越しに、地面に当たる轍の感覚が伝わってきた。


