いや、きっかけはそれだけではない。
『奪われたなら、奪い返せばいいじゃないですか』
悔しくて涙を滲ませたとき、少年がそう提案してくれた。
それがあってセドナは、今の行動を取ったのだ。
少年に言われなかったら、ただ『悔しい』の不愉快さを味わうだけになっていた。
この感情をばねにして、次に進められていなかっただろう。
いつまでも、くすぶった気持ちから動けないでいた。
(感情を教えたやつに、教わっちまうとはな……)
セドナは両腕を突き上げて伸びをする。
腕を戻しながら、軽く少年の頭を叩いた。
「なにするんですか」
「悪い悪い。さーて、昨夜の作業の続きするか」
不満げな顔の少年に笑いかけ、セドナは腕まくりをして椅子に手をかける。
「ダメです」
「うわっ」
少年はセドナの後ろ襟を捕まえ、ソファに戻した。
ぼすん、と着地して、セドナは少年を睨む。
「なにすんだよ、仕返しか?」
「それもありますが、今日はもう遅いんですよ。
絶対に明日に響きますから、ご飯を食べて、早く寝てください」
「平気だって、まだ作業はできるよ」


