ニコの目がゆっくり動き、ティファニーの顔を捉える。
ティファニーは顔をくしゃくしゃにしていて、また目に溢れそうなくらい涙をためていた。
光がきらめき、彼女の無色の瞳がニコの瞳と同じ色を宿す。
その双眸をまっすぐ見つめてニコは言葉を紡いだ。
「ぼくノ最後ノ主ガ、ティファニーでヨカッタ」
ティファニーが短く息を吸い込んだ。
拍子に涙が伝い、ぽつりと羅針盤の軸に落ちる。
――チリ。
小さな音と同時に、羅針盤の周囲に細かな金色の光の粒が生まれ始めた。
それは軸のすぐ傍らで渦を巻き、一本の針の形に集まっていく。
「ぼクをゴーレムとしてジャナい・家族トシテ必要ダト言テくレタ、そレガトても嬉シカッタ。
ソレニ君ハ、自分が苦シクナルと分かッテイナガラも、ぼくタチを守ルタメにセイクリッドたちに従ッテイタ。
コンナニ人ノ血に塗れたボクをとテモ大切ニシてくれていタコト。
ぼくハ君にもラッタ心ヲ介して知っテイマシた」
声がうまく出せなくなり、言葉も思うように発せられなくなってきた。
体を動かしている力や体を形成している部品が、徐々に弱まり止まりかけているのを感じる。


