極彩色のクオーレ






「ティ……」



苦しそうなティファニーの顔に手を伸ばそうとして、ニコは自分の腕が動かないことに気付いた。


これまで数多くの壊れた物を修理してきた腕は、今は棒切れ同然になっている。


ニコはいくら動かそうとしても微動だにしない腕を諦め、もう一度ティファニーを見上げる。


その脳裏に、かつて自分が立っていた戦場の記憶が駆けた。


血をふきこぼしたような夕焼け空が、彼女の横顔に重なって見える。


あの時自分が立っていた場所には、自分のせいで骸になり果てた敵兵や使い物にならなくなった武器が転がっていた。


味方の兵士たちもいた。


自分と同じように雑兵人形として動き、壊された人形たちも。


自分はいつの戦場でも生き延びた。


多くの殺戮と破壊の上に立つ勝者として、60年もの間動き続けていた。


今の自分はまるで、あの場に倒れていた骸たちのようだ。


彼らはどんな心を抱いて死んでいったのだろうか。


その瞳から光が消えてしまうまで、何を見つめていたのだろうか。



(……ああ、そうか。ぼくは、あの時の報いを受けているのか)



許されるはずがないとは分かっていた。


だから自分が今置かれているこの状況を理不尽だとは思わない。