ぎり、とシャロアが歯を食いしばる。
ティファニーの手を外すと、その手をしっかりと握って、涙にぬれる彼女と顔を見合わせた。
「……落ち着いて、聞いてくれ」
先ほどまでの軽い調子から一転して、重く静かな声だった。
激しく渦巻く感情を、冷静さでどうにか蓋をして押し殺しているような、そんな声色だ。
おのずと空気が張りつめていく。
「あのセイクリッドってやつに撃たれたのは、25番目の感情を、すなわち心を司る羅針盤だ。
羅針盤はゴーレムの命、人間でいう心臓に相当する。
だからそこが破損してしまったら、もう助かる方法はない……手遅れなんだ」
シャロアは言葉を選んでティファニーに教えていた。
滴り落ちる涙をそのままにして、ティファニーが掠れた声を出す。
「え……」
「おれも心臓部を直す方法を探しているんだけど、まだ見つかっていない。
いや……単に『直す』ことなら、できなくもないんだけど」
「それなら急いで」
「ダメだ」
シャロアが首を振った。
何かを断ち切るような想いがこめられた声だった。
もう一度ティファニーに向き直る。
すぐに虚勢に隠されてしまったが、確かに一瞬だけひどく悲しげな情が映っていたのを、ティファニーは見逃さなかった。
後頭部を角材で強く殴られたような衝撃が全身に走る。


