「シャロア……早く、ニコを直してあげて」
細かい傷をいくつも負った手が、縋るようにシャロアの左腕を掴んだ。
しかしシャロアは羅針盤に目を落としたまま答えない。
ティファニーは唇をわななかせ、震える息を吸い込んだ。
膝立ちになって感情のまま彼の腕を強く揺さぶる。
「ねえ、どうして直してくれないの!?
ニコはあなたが改造したゴーレムなんでしょ、あなた、『天才』って呼ばれているんでしょ!?
それならニコを直すことだってできるんでしょ!
お願いだから、ニコを直して……私の家族を、助けてよ」
途中から涙を流しながら、ティファニーは手に額を寄せてシャロアに懇願する。
悲痛な声に、ラリマーが思わず目をそらしかけてこらえた。
知らせてあげたくない、知られてしまいたくない、分かって欲しくないと思わずにはいられなかった。
だが、知らせる以外にほかは無いのだろう。
彼女には惨すぎるこの現実を。
セドナは自分の左胸あたりを強く握りしめた。


