舌打ちしてシャロアから視線を外したラリマーは、前方の森で一か所、木が生えていない場所を見つけた。
もしかしたら、あそこがティファニーの父が日記に記していた丘なのかもしれない。
「あそこだ、シャロア。
あそこが蜻蛉花が群生している丘だ」
ラリマーは木が生えていない地点を指差す。
シャロアは少し首を伸ばしてそこを確認した。
「へえ、あそこがか。
25番目を直すには打ってつけだな。
じゃあ降りるからしっかり掴まってろよー」
「えっ!?」
「よいしょおー」
シャロアが今度は左側のレバーをいっぱい上げる。
鉄鳥が翼を畳み、頭から丘の方へ向かって加速し始めた。
舞い上がりそうになり、セドナとラリマーは痛いくらい取っ手を握りしめ、半ば床を押すような力を足に込める。
また目が開けられなくなった。
耳をふさぐような風圧で、ブリキの部品が上げる悲鳴すら聞き取れない。
やがて空を泳ぐ巨大な鉄鳥は、木々に囲まれた名のない丘に舞い降りた。


