極彩色のクオーレ






「だってさ。あの約束は無しみたいだよ」


「そんなあ!」



突然鉄鳥が絶望した調子で喋った。


違う、鉄鳥の腹部から声がした。


中は空洞なのか声がわずかにくぐもり反響している。



「この声は……」



ニックスのことを答えた農夫が目を丸くする。


シャロアは鉄鳥から背中を離すと、側面に付けられている取っ手を掴んだ。


すると鉄鳥の腹部が開き、中から一人の青年が飛び出してきた。


勢い余って開きかけていたドアに激突し、蝶番が折れる音がした。


くしゃくしゃな橙色の髪にそばかすの目立つ顔。


「ニックスだ!」と誰かが叫んだ。


ニックスは演説台から駆け降りると、唖然としているセイクリッドに倒れこむようにしてとびかかった。


膝をつき、乾いた泥のついた両手でセイクリッドの絢爛な服を鷲掴む。



「や、約束は無しってどういうことっすか、王子様」


「なっ、何だ貴様は、王子から離れろ!」


「その薄汚い手で王子に触るな!」



近くにいた衛兵たちが急いで引きはがそうとニックスの身体を捕まえる。


しかしニックスの方も必死らしく、かなりの力でしがみついていた。


衛兵たちの手に耐えながらセイクリッドに訴え始めた。