極彩色のクオーレ






「それが何だと言いたい?


それは動植物には無害なものだぞ、そのくらい僕だって知っている」


「焦るなって王子サマ、今から説明するからよ。


あんたの言うとおり、この化合物自体に毒素なんかない。


すっげえまずいけど人間が食っても何ともないぜ」


「まずいって、お前食ったことあるのかよ?」



鼻の上に小さくしわをよせたセドナを振り返って、ラリマーがあっけからんと答えた。



「旅の途中にちょっとな。砂糖が入ってる小瓶と間違えてさ」



一体何をどう間違えれば酸化ミネラルゴブリン砒鉱を砂糖と思って口にするのだろうか。


セドナは頭をがしがし掻いた。


彼がどんな旅生活を送ってきたのか想像するだけでも恐ろしい。


つまり深く考えない方がいいということだ。



「この瓶はセイクリッドの部屋の本棚、しかも本とそっくりなデザインの小箱の中にあったんだ、この紙と一緒にな」


「バカな、そんなはずはない。瓶はすべて処分」



とっさに反論しかけてセイクリッドは慌てて唇をつぐんだ。


舌先でも噛んだのだろうが痛そうに顔をゆがめて横をふいと向く。


言葉は途切れたが、十分すぎる反応だ。


ラリマーはにやりと笑って続ける。



「ああ、そうだったそうだった、この小瓶はオレのもので、小箱にあったのはこの紙だけだよ。


いやあ、なかなか凝った隠し場所だな。


ピウに教えてもらった時はすっげえ驚いたよ」



ラリマーの右手の甲にちょろりと登った赤毛のエピドーが頷くように小さく鳴く。


セイクリッドがぎり、と歯をかみしめた。