シャロアの言い方はラリマーよりも棘が刺さっていた。
というより歯に衣着せぬ言い方である。
はっきりと口にされた『悪事』という言葉にまた街民たちは戸惑いを見せ始めた。
「……セイクリッド、マスターに嫌われましたね」
「え?」
ぽつりと呟いたニコにティファニーは聞き返した。
ニコはセイクリッドとシャロアを交互に見て説明する。
「マスターは自分が『天才』であることをあまり知られたくないんですよ。
ぼくと同じで先入観を持たれるのを避けるために。
当人がいないところで噂感覚に話すのはいいみたいですけど、こんなふうに大衆の目の前で『天才』と呼ぶのはまずかったですね」
「そ、そうなんだ……」
だからニコはシャロアに怒られなかったのか。
納得しつつ、ティファニーは今後絶対にシャロアのことを話さないでいようと決めた。
セイクリッドが短い笑声をたてる。
「あなたも随分面白いことを言う。
いいだろう、聞いてあげるよ」
「あんたに耳を貸されなくても話すつもりだよ、オレはこのルースに住むやつらのために話すからな」
ラリマーは自分の舌を指差すと不敵に笑った。
いつの間にか戸惑いの波も収まり、視線は再び語り師のもとに集まった。


