「じゃあ、セドナたちの足止めは俺たちに任せておけ。
中央塔の奴らと一緒なら、あいつらに勘付かれてもうまくやれる」
「ええ、頼みましたよ」
セイクリッドが馬に乗り、衛兵と荷車を連れてキューレットへ進む。
狩人たちも銃や縄などを背負い、鷹揚でどこか楽しげな足取りでルースへと引き返した。
両者が離れてから、ギベオンはまだ身を縮めているケセラを立たせてティファニーの家の庭に移動した。
窓は開け放されており、室内はテーブルと椅子が倒されてあった。
テーブルに載せていたのだろう、マグカップが割れて破片が床に散らばっている。
窓のすぐ側に数滴、赤い雫が落ちていた。
恐らくティファニーの血だ。
「ひどい……」
ケセラはずきりと痛む左胸を押さえた。
ティファニーの家を訪れるのは好きだった。
親しい仲間と過ごせるというのもあるが、なにより、ティファニーの家はとても温もりがあるのだ。
足を踏み入れるだけで、心がほっとする不思議な力がある。
だからニコやセドナ、ラリマーはもちろん、家が遠いリビアやタンザたちもよく来るのだろう。
みんなが自然と集まる場所。
なのに今は、荒らされてしまったせいで温もりを感じなかった。
強くて怖くて、悪意に満ちた冷たい空気が渦巻いている。
大好きな場所を簡単に壊されてしまった。
それが悲しくて胸が痛くなって、ケセラは唇をかんで俯いた。


