「それにしても山南さん、お久しぶりですね。

あなたに会えるのも楽しみにしていました」


伊東さんは山南先生は恋の対象ではないらしく、普通に友好的な微笑みを見せる。


「あはは……ありがとうございます」


「落ち着いたら、色々とお話をしましょう」


「はい、ぜひ」


伊東先生はちらりと、山南先生の怪我をした腕を見たけど、それについては何も言わなかった。


もしかすると、平助くんから山南先生を励ましてほしいと頼まれているのかも。


山南先生が苦笑交じりに答えると、今度こそ伊東一派は離れの方に歩いていった。


「……近藤さん!なんなんだよありゃあああああ!!」


姿が見えなくなった途端、副長が局長の胸ぐらをつかむ。


しかも泣いているような、怒っているような顔で。


本当に浮気された人妻みたい。


「ええと……あれでも頭は切れる人なんだ」


「『頭の線が切れてる』の間違いじゃねえのか!」


「トシ、落ち着いてくれ。な」


珍しく隊士の前で取り乱す副長をなだめながら、局長も自分の部屋へと向かっていく。