「ごほっ、ごほ……」


倒れて以来、総司の咳はどんどんひどくなっていく。

夜、同じ布団で寝ていると、心配で、不安で、たまらなくなった。


「ねえ、辛いんでしょ?あたしの血をあげるから」


何度も何度もそう提案するのだけど、総司は決して首を縦には振らなかった。


「こんなの、ただの風邪だ」

「でも」


狼化して戦っている最中に倒れるなんて、どう考えても普通じゃない。


「ばか。風邪くらいで好きな女の肌に、傷を付けたい奴がいるかよ」


総司はそう囁くと、あたしの腕をとる。

そこには、上様に血を捧げた時につけた短刀の後が、薄らと白い線になって残っていた。


もちろん、総司が噛みついた首筋の傷も今も残っていて、総司にとってそれは、大きな後悔となっているようだった。


「そんなの、いいのに」


自分の肌に傷がつくことより、総司が苦しい思いをする方が、よっぽど辛いのに。

銀月さんにも『総司をよろしく』って頼まれてるのに……。


「……じゃあ、ちょっと補給させてもらうかな」


総司が低く囁くから、ぱっと顔を上げる。

すると総司は、血を得るために噛みつくのではなく、熱い唇を押し付けてきた。