「……そーいうもんだよ。その友達も、仮に部活辞めたって学校内にはその『先輩』という存在が2年間、つきまとうわけなんだから」


足を組んで、そこに頬づえをするようにして説明してくれた。

学校は、勉強するところ。でも、実際はそんなの二の次で、友達を作ったり、笑ったり。ケンカしてもそれをどうにか修復させたり。そういう“人間力”をつける場所でもあると思う。
それに、なによりやっぱり楽しく過ごすのが一番――……。


「それからね。雪生は『感情(怒り)は、なんにもイイものを生み出さない』って言うようになって。どこにも属さずに、空気のような存在だったよ」


「人との距離感がわからない」と話してくれたときを思い出すと胸が痛い。
ただ単に、“苦手”という単純な言葉で片付けて理解してしまっていた。

もちろん、あのときのその説明だけで、こんな過去まで想像できないことはわかるけど。
それでも、なんだか悔しくて――。


「小学校のときとまるで雰囲気変わっちゃってさ。
で、『先輩』問題は関係ない、他校の女子に声掛けられるまま、彼女次々作ったりして。結構小学生ん時からモテてたからねー。
それで……“荒れてた”っていうか」
「……他校、の」


「彼女」。
そう……。そう、だよね。もうイイ大人だし、誰かと付き合ったりする過去があるのは普通だよね。むしろ、わたしが普通じゃないだけで……。

だけど、アキさんの言い方だと……なんだかそこに“愛”はないように聞こえるから。だから、こんな悲しい気持ちになるのかもしれない。


微妙な想いに戸惑っていると、ガチャリと空気を変える音が割り込んできた。