あー。眠い。頭が重い。ダルイ……。

すっきりしないのは気分だけのはずなのに、どうも仕事まで捗ってないように思えてしまって。
こういうときは、せめてひとつだけでもすっきりとさせたい。

本心は、精神的な救いを求めていて――――要するに、“会いたい”。
彼女の姿が視界に入っているなら、いますぐに甘えるように抱きついて、その感触と体温を感じるだけでいい、なんて思えるんだけど。

それは、たった今すぐにとは、叶わないから。
と、オレはバスルームで熱めのシャワーを浴びた。

きゅっとシャワーを止めて、バスルームを出る。わしゃわしゃと髪を拭くタオルから香るいい匂い。


いつもと同じ洗剤の匂いのはずなのに、オレが洗濯するのとはどこか違う気がする。不思議だな……。


手を止めてそんなことを考えてると、遠くでドアノブがまわる音が聞こえた気がした。

あ。もう来たんだ、美希。ちょうど良かった。また、髪乾かしてもらお。

あえて髪を適当に拭って、服を着る。今日は“来客”があるから、ジーンズを。
……その“来客”が、オレの『すっきりしない』原因なのに。

Tシャツに腕を通したときに、足音が近づいてくる。

美希はいつもおどおどとしてるから、今日も、突然オレがここから顔を出したら、飛び上って驚くだろう。
小柄な体を、さらに小さくして。潤んだ目でオレを見上げる美希が、可愛い。

すっぽりとこの腕に閉じ込めるのは、容易で。
その肩は小さなはずなのに、あっという間に、驚くほど大きな存在。

なにが、なんてきっかけは具体的にあげられなくて。でも、確かに、手が、肌が、心が、彼女を欲していて――。
健気に、懸命に人(オレ)の役に立てるように頑張ってる姿に気付いたら、その全部を自分に向けさせたくなってた。