黴と埃の臭いに少し顔をしかめながら、尚人は蔵の中心辺りで足を止めた。
暑い外とは打って変わり、中はひんやりとした空気が漂っている。
仄暗い中、尚人は屈んで片膝をつくと、じっと白く埃の積もった床を見つめた。
(足跡がここにはない…)
人鬼が尚人の実家に侵入してきた時には、泥のついた足跡が廊下に残っていたのだが…。
あの様子だと、いくら死んだ人間の霊が鬼に姿を変えたとはいえ、実態は確実にあるものだとばかり思っていた。
(この右目だって、実際に存在するんだ。だったら、ここに人鬼の痕跡くらいは何か残っているはず)
なのに、足跡だけでなく物に触れた様子もないのはなぜなのか…。
積もった塵も時間の流れのまま、静かに残っていた。
鬼がここに封印された経緯も、名前も、そして尚人に会う事を望んでいる事も全て分かっている。
だから来た。
暑い外とは打って変わり、中はひんやりとした空気が漂っている。
仄暗い中、尚人は屈んで片膝をつくと、じっと白く埃の積もった床を見つめた。
(足跡がここにはない…)
人鬼が尚人の実家に侵入してきた時には、泥のついた足跡が廊下に残っていたのだが…。
あの様子だと、いくら死んだ人間の霊が鬼に姿を変えたとはいえ、実態は確実にあるものだとばかり思っていた。
(この右目だって、実際に存在するんだ。だったら、ここに人鬼の痕跡くらいは何か残っているはず)
なのに、足跡だけでなく物に触れた様子もないのはなぜなのか…。
積もった塵も時間の流れのまま、静かに残っていた。
鬼がここに封印された経緯も、名前も、そして尚人に会う事を望んでいる事も全て分かっている。
だから来た。


