佳那汰と恋夜が掲示板の前で初めて会話したところから少しだけ遡り、二ヶ月前のこと。


私立校の推薦入試の為、一足先受験も終わり、周りはまだ必死に受験を戦っている中暇を持て余していた佳那汰。


「佳那汰頼む!最後の試合なんだ!全国区の我妻北中が練習とはいえ試合してくれるなんて奇跡なんだ」


そう言って試合に出るよう拝み倒してくる友人に、佳那汰はキョトンとするしかなかった。


佳那汰の学校のバスケ部は弱小で、部員も七人と少ない部活だ。


しかも、そのうち三人が幽霊部員。夏の予選も佳那汰は助っ人として参加したが、勿論結果は一回戦敗退。


「しかし、なんでそんな強い学校が練習試合なんか組んでくれたの?」


「あの学校は挑んで来るところは拒まないで有名なんだよ。中学最後に、どうしてもやりたくて、俺達先生に頼み込んだんだ」


「だから頼む!助っ人してくんねぇ?」


「それは構わないけど」


佳那汰は疑問に思った。どうして負けの分かっている勝負に彼等は挑むのだろう、と。


しかし、暇は耐え難いし、まぁいっか。


そんな軽い気持ちで助っ人を快諾した佳那汰は、その週の日曜日、彼等と共に強豪、我妻北中へと乗り込んだ。