曲がテンポをもっと上げた瞬間、俺は両手に保持するボールを代わる代わる股に通していく。


《Oh!?彼は一体何者なんだ!紳士淑女達よ、このスゴ技の押収は、夢かい?現実なのかーい!》


MCの煽りに、ハイテンポな曲とグルーヴするかのように加速した観客の歓声。


曲の節目に上手く合わせ、トン、と右手はボールを指回し、もう一方のボールはわざと踵で弾いて背中に乗せて、そこから転がして左手へ。


ワァっと盛り上がる声に、俺は痺れるような快感に体を震わせた。


《この勝負、永遠に観ていたいものですが、ザンネーンデッスッ!タイムオーバー!ここまでだよー!》


どうやらパフォーマンスの時間は終わりで、次の試合の時間のようだ。


「凄い度胸と技量だね。ホントにドーテー?」


「決めつけんなし、ドーテーじゃねーし」


ふふ、と楽しそうに笑うイケメンゴジラが拳を出して来たから、俺もそれに自分の拳をゴツ、と合わせる。


「また、後でね」


そう言い残してコートから退いていくイケメンゴジラの背中をチラリと見て、俺も観客席へ戻る。


『また後で』というのは一体どういう意味を含んでいるのだろう。


そう疑問に思い始めたのは、この痺れるような快楽が引いて、冷静になってからだった。