【完】籠球ロマンティック

ボールを操る55番は、二つ、とびきりキレのあるフェイクをぶち込んだ。


保持したボールは右下部。そこから相手のスティールを防ぐ為に左足を出したまま後ろにボールをハンドリングさせ、右から左へ。


「おいおい、あのスピード感で何つうキレ味のあるビハインド・ザ・バックだよ!」


「ビハインド……?あれ、恋夜は出来ないの?」


「出来る!……けど、こんな目で追うのがやっとみたいな試合であんなに軽々出来るもんかよ!」


知らなかったと同時に、かなり悔しい。


ストリートボールがこうもハイレベルだったということを知らなかった。


「あの55番、5on5でも十分通用するんじゃねぇの?」


「通用するわよ。きっと今でもね。足首やってなかったらの話だけど」


すっかりあんぐりしてしまっていた俺と佳那汰に、試合から目を離すことなくリッコが呟いた。


「イツ……55番はね、元はBJリーグの選手だったのよ」


隣のリッコの横顔は、なんだか浮かない顔である。