神奈川と東京の境目にある俺達の学校から、そのライブハウスは車で40分程の場所にあった。


車の整理券を唇で挟みながらバックで駐車するハーシーは、やはりチビで童顔なんだけど、大人なんだなぁ、なんて、後部座席でぼんやり眺めながら思う。


「ホラホラ、ついたよーい!」


そんなハーシーに促され、重低音が漏れ出すその場所へ足を踏み入れる。


ズン、ズン、とバイト先でいつも聴いているようなクラブミュージックが流れる会場のその手前。


チケットを渡し、別料金のワンドリンクをハーシーに奢らせ、その重たい扉をギシ、と軋ませて開いた。


「なんっ……だ、これ!」


そこは、異様で、異質で、何より輝いていた。


星の形の照明が天から、ぐるりと観客席に囲まれた中心に光を降らせていて。


その中心にはちょうどハーフコートの空間と、ひとつのゴールリングがそびえ立っている。


奥の方にDJがおり、その技巧に来ている観客達がすでに湧き上がっていた。


「わ、わんだほー、わんだほーだよ!な、なっな!恋夜!」


「お、おう」


普段はどちらかというと他の同級生に比べて物静かなインテリ水泳部イケメンの佳那汰が、見たことないくらいに興奮していた。