俺は物陰になっていた自販機の後ろから出て、イツの元へ走っていく。


「ねぇ、あのムネヒロって、どんなプレイヤー?……正直、二試合観たけど、あれ全力じゃないっしょ?」


そう……あの男、というより『ディアボロ・ボーイズ』の力を、二試合の中で計りきれていないのだ。


リッコもずっとぶつぶつ、と何か言いながら試合を観ていたが、納得いく顔を一度もしなかったし。


「うーん、公式リーグにいた時はとにかく正統派ボーラーってイメージで、確かに、実力の底が全く見えなかったな」


人差し指を顎に添え、少し難しい顔をしたイツは、真剣な表情をして話を進める。


「……正直、リッコよりもラブよりも、あいつの技術は高いと思う。巧いんだ、とにかく」


普段あまり人を褒めないイツがこれだけ言うんだ。かなり巧いに違いない。


「でもさぁ、燃えるよね。強い奴をぶっ倒す感覚。俺、負ける気しねぇの」


それでも、俺は強敵に向かってただただ、わくわくしていた。


「おー、若さから来る根拠の無い自信、良いねぇ」


根拠が無くても、自信が溢れて仕方がない。


激動の第三試合に、止まること無いわくわくのタイフーン。さっきよりも、鮮やかに乗りこなしてやろうじゃんか。