「せっかく楽しく1on1やってるのに、考え事、し過ぎじゃない?香椎君ってさっきのオフェンスの時もだけど、集中力無い人?」


俺の集中力が別のところに飛んだのを見逃さなかった皇律子が、猫パンチのような素早さでボールに手を伸ばす。


「おっと……!やらねぇよ!」


「それも予測済みよ!」


皇律子の動きを察知して体をシュートモーションへ移項すると、言葉の通り、皇律子は小さな体を高く空中に飛ばし、ブロックにかかった。


「やーねー、俺だって、それも予測済みよ?」


「うっ……そでしょ!?」


けれど、俺の手の中にはボールはない。ボールは、シュートモーションの体勢の俺の、内股の間に挟まっているのだから。


「バァイ?小さなスタープレイヤー」


皇律子を置き去りにして走り出した俺は、左足を上げ、右後ろからダム、と股の間にボールを通し、レイアップを沈める。


トントントン、と静かにボールが転がって、電車が線路を走る音が、高架下に響き渡った。