そのオーラに、賭けてみようか。


「な!?頭おかしくなったの!?」


皇律子が俺の行動に驚きの声を出す。けれど、どんな表情をしているのかは、分からない。


何故なら、俺は今、両方の瞼を閉じているからである。


神経を研ぎ澄まし、音を、風を、香りを感じる。


「恋夜・ザ・心の瞳」


「何それ!意味分かんないけど、諦めたってこと!?」


少し苛ついた皇律子の声と共に、足音とボールの音がぐん、と近くに寄ってくる。


考えが無いわけじゃない。皇律子のストリート仕込みのムーブは、視界で捕らえると複雑な動きすぎて、体が反応してしまうんだ。


だから、あいつが俺の体を抜いた、その時に。


バシィ、と、皮膚とゴム製のボールが接触する音が、鼓膜を少しだけ揺らす。


「!!?」


「な?カット出来た。まぁ、多分二回は出来ないだろうけどね」


俺の左、つまり皇律子からすれば右側から抜きにかかったその瞬間、瞼をカッと見開き、ボールのみに集中し、それを弾き飛ばしたのだ。


「あれ、弾いた場合って、普通のルールみたいに俺またディフェンス?」


「……いいえ、変則ルールよ。次は君のオフェンス」


悔しそうに、唸るような声で答えた皇律子に、俺はニヤリ、と笑みをひとつ落とした。