「ハーシー、今日も来ないのかしら……」


冬休み最終日。変わらず昼から暇してバスケをしていた恋夜、律子、論理の三人。


律子はコートの隅でミルクティーを飲みながら、頼りない声で呟く。


「大丈夫、信じて待ってやろう。な?」


そう言って律子の頭を撫でながらも、恋夜も不安で堪らない。


「レン、リッコ、不安?元気、出そ」


そんな二人のことも心配である論理は、二人の頭をぎゅーっと抱き締める。


「なんか、マカロンってあったけぇ」


「お子様体温なのね」


「お子様、じゃない。リッコ、より、大人、だ、もんっ!」


論理のその子供っぽい返事に苦笑いしつつ、その温もりを確かめる恋夜と律子。


こうしてれば、不安が少しだけ薄れる気がした。


「オーイ!皆あったかそー!おっちゃんも混ぜてよぉ!」


そんな三人に、男にしては高い、だけど、しっかり声変わりしたあの暖炉のような温かな声が届く。


「ハーシー!」


「よっす!……ん?何?会えなくて寂しかったとかぁ?あはは、これでも忙しいのよ、大人って」


あまりにもいつも通り過ぎる葉月のそのリアクションに、三人はぽかん、としてしまう。


ダッフルコートを脱いだ葉月は、寒さを凌ぐ為に、代わりにパーカーを羽織った。


愛しの彼女からの、最初で最後の贈り物である、あのパーカーを。