「どうだラブ?俺のスリッピンスライドは、ゴミ箱にポイする技か?」


「……にゃろう。ぜってーあんたより見事なやつ、出来るようになってやる!」


正直、あれだけ見事に負けて悔しい。とてつもなく悔しい。


けれど、それ以上に心臓がときめいて、バクンバクンと鼓動が高まる。


その、ときめきを孕んだ俺の顔と答えに満足したらしいイツは、ニィ、と口角を上げた。


「あたぼーよ。そうでなきゃ、俺の愛しいリッコは任せられん」


「ブラコンか……いや、ごめん。ガチのブラコンだったっけ」


まるで俺の背中を見て育て、みたいな教育方針のイツだけど。


そうだ。背中を見て吸収出来るプレイヤーが目の前にいるんだ。


スポンジのようにぐいぐい吸収して、こっちの方が潤ってやろうじゃねぇの。


「フフフ、レンって最近、イッツんに似てきたよね?流石弟分!」


「キモいとこは似ないでほしいと切に願うわ」


「……お腹、空いた」


底無しに練習して、相手がチビるくらいに巧くなって、俺はあのキラキラしたコートでボールを操り羽ばたいてみせるんだ。