イツは俺へ、スピード真っ向勝負を挑むように、ダムダムダム、とボールをフロアに打ち付け詰め寄ってくる。


対峙した俺のバッシュが、キュキュ、と音を奏で、激しい勝負に花を添える。


イツがとびきりキレのよいボール捌きでフェイクを三つ加え、俺から見て左から、抜きにかかった。


「させるか!」


「おっ!流石!反応してくると……思ったよ!」


だが、イツは俺を『認めている』と言っていた。認めているからこそ、その技を、繰り出す機会を窺っていたのだろう。


イツは何てことない、日常の動作のようにタン、とひとつ右手でドリブルを置くと、左手で取ると同時に右手と右尻を地面につけ、ぐるり、とブレイクダンスを踊るように回ったのだ。


「なっ……!」


反応することさえ、許されなかった。


その技を軽々と繰り出したイツは、俺をそこにおいてけぼりにし、どうってことないのに、何故か光でぼやけて見えるあの眩しいゴールへひょい、とレイアップを放った。


「負け……た?」


すっかりイツにみとれてしまっていた俺は、その事実に瞼を瞬かせることしか出来なかった。