「ねーねーそのガラス玉、ラブちゃんのお供え物なんだねぇ」


ヒイロは俺の隣に並ぶと、懐中電灯で花瓶を照らす。


その花瓶は、今や俺が持ってくるその玉でいっぱいで、花は挿せない状態だ。


「あー、うん。父さんさ、これ好きで。何で好きかってーと、これがビー玉じゃなくてエー玉だからなんだと」


「エー玉?何ソレ?」


「ビー玉のビーってアルファベットの『B』らしくて。瓶ソーダに入ってるこのガラス玉が『A』なんだよ。完成された丸。だから好きっつって、良く飲んでたなぁ」


その影響か、俺も、バスケの時は瓶ソーダじゃないとダメになった。


思えば、父さんからの影響は大きくて。


AND1が好きだった父さんの影響で、俺のプレイスタイルは5on5をやっていた頃からストリート寄りだし。


喋り口調も、例えば『そんなことない』っていうのにも『ンなことない』って言ってしまうし、人に対しても『お前』じゃなくて『あんた』と言う。


自分に似た、つり目の男にしては大きな瞳をした父さんに、思えば俺は小さな頃から未来の自分を投影して真似していたのかもしれない。


こんな、日に日に父さんに似ていく俺を見て、もしかしたら母さんは父さんを思い出して寂しい思いをしてたのかもしれない。