その、どっしりとしたディフェンスを逆手にマカロンは左手をビシ、とリューイの顔スレスレまで突き出し、猫のように威嚇した。


これには、リューイも一瞬怯み首を後方に下げる。


「マカロン、ざ、猫ぱーんち」


どうやら、俺がたまに興奮した時に即興で技に命名するのを真似たらしいが、マカロンらしく妙に抜けている。


威嚇した時に右手でポーンと上げたボールをリューイの背中と自らの掌を使ってトン、と止めたマカロンは、ペロリと舌を出して、舌の丸っこいシルバーのピアスをキラリと反射させる。


そのままドリブルで突き進むマカロンに立ちはだかるは、イケメンゴジラことイツ。


「イツ、とは、無理」


「はっ!?……って、マジか」


イツが先回りで点を取るのを阻んでくるのさえ予測済みだったマカロンの手には、既にボールは無く。


その全ての指示は勿論リッコが行っているもので、予測済みなのはリッコであって……まぁ、この辺のことはゴチャゴチャ説明しても仕方ない。



じゃあ結論、ボールはどこかっていうと。


イツがディフェンスにつく時の、その視界の揺らいだ一瞬のうちにボールを受け取っていた、一番すばしっこく静かに走るハーシーが保持していた。


更に、瞬きしている間にハーシーの手にもボールは無くなっており、ボールはゴールリングの中。