「知らないで使ってたならもっと凄い!……ねぇ、間違いなくスタープレイヤーになれた君が、どうしてバスケ、してないの?」


皇律子の可愛らしい顔は、くるくると目まぐるしく表情を変える。


そして、その真っ直ぐな瞳が俺を捕らえ、逃がさない。逃げたいのに。その真っ直ぐな瞳からも、その事実からも。


「……ンなの、俺だってわかんねーし。出来るなら続けたかったけど、環境が許さねーんじゃしょうがない、でしょ」


「ふーん。何となく、察した」


曖昧な答えにも『どうして』と突っ込むことの無い皇律子に、少しだけ安堵する。


皇律子はアホそうな見た目に反して頭の回転は悪くないらしい。少し話しただけで、俺がただバスケを辞めてグレた不良じゃないことは分かってくれたようだ。これで話は終わる……と思っていた。


だが、次に皇律子が発した言葉は、俺の予想を遥かに越えた、一言だった。


「香椎君、今から私と1on1、しようよ」


「は?」


その言葉は、これまでの会話と何の脈絡も無い言葉。


俺は所謂『鳩が豆鉄砲を食らった』状態の顔だろう。