近くで見るとド迫力だな。全力でパフパフしてぇ……じゃなくて、え、何?俺、皇律子と絡んだこと無いけど、何事?


事態が把握出来ない俺に、皇律子は満面の笑みのまま、言葉を発する。


「吾妻北中7番!」


その一言で、俺の乳への浮わついた気持ちが、一気にサーっと落ちていく。


やべぇ……こいつ、隣のクラスだから、さっきの体育の出来事を知っている。


そして、恐れていたことが起きてしまった。あの頃の『香椎恋夜』が今のこの『香椎恋夜』と同一人物なのだと、当時を知っている奴に気付かれてしまったんだ。


俺は無言で立ち上がり、鞄を肩に引っ掻けて、皇律子が次の言葉を発する前に、その白い手首を掴んで教室から走り去る。


明日佳那汰やクラスメイトに色々聞かれるのめんどくさい、とかそういう心配が全く出来ない程に、頭が真っ白になっていた。


「ちょっと!足速い!握る力強いってば!」


「え……?あ!悪い!」


兎に角その場から去らなければ、ただそれだけしか頭に無かった俺は、理由もなく皇律子を連れて逃げたことに今更気付き、慌ててその手を離した。


「香椎、恋夜君。今日の体育の時のシャムゴットアイス、あれでピンと来ちゃったよ」


「シャム……は?何だって?」


「君のやった股抜きのこと!知らないでやったの?あれ、ストリートボールの技だよ」


さっきから何言ってるんだ、このロリ巨乳。ストリートボールって何だ?俺がやったのはバスケの応用技だけど。