論理は、これまで男と『会話』しなかった数ヶ月の出来事を、ホワイトボードに書いては消し、書いては消して説明した。


しかし、濃度の高い内容に変わったのは、やはり恋夜と出会ってからの期間。


「じゃあこの『レン』君と『リッコ』ちゃんが論理君にとってはもどかしい存在なんだ?」


ホワイトボードに登場人物の名前を書き、相関図を纏めた論理に男は楽しそうな笑い声を上げて尋ねる。


論理はその言葉に頷き、矢印の上のハートマークに『早くくっつけばいい』と書き込んだ。


「ははは!……ねぇ論理君、取り戻したバスケは、仲間は、素晴らしいかい?」


男の問い掛けに、論理はワンテンポ止まった後、ホワイトボードの中身を消して『もちろん』と平仮名で描き、またワンテンポ置く。


そして、その文字の下に『でも、センパイのことは忘れない』『たいせつ』と二文、書き出した。


「論理君が苦しいなら、忘れるのも必要なことなんだよ?」


『くるしいけど、忘れるのは悲しい。悲しい方がいやだ』


ゆっくりと丸い文字を書いた論理は、色素の薄いその瞳を伏せて、あの頃のことを思い出した。